2014年12月1日

丸、3周年。

マルサンが丸3周年を迎えました。
ひとえに、この小さな店内で夜な夜な
楽しく飲んで下さるお客様のおかげです。
改めて深く感謝申し上げます。

この1年、また新しい出会いが
たくさんありました。
と同時に、寂しい別れもいくつか経験しました。
この1年間に思いを馳せるとき
忘れられないお客様の言葉があります。
悲しい別れの間際にぽつりと口にされた
その言葉はとても小さな一言でしたが
心につよく刺さりました。

「数年前ならこの街を離れるとしても
 特に何の感慨もなかった。けれど今は
 バルで飲むことができなくなること、
 そしてバルで出会った友人たちと
 会えなくなることが何よりも悲しい。
 まさかこの街に対して
 こんな思い入れが生まれるなんて」

電撃的な結婚を機に
地元へと帰られたお客様の言葉です。
この言葉を聞いた時
ふとこんな妄想に囚われました。
人は誰しも1色ずつ絵の具を持っていて
自分の色をベースに
そして自分と関わった人たちの絵の具を
お借りしながら人生を彩っていくのではないか、と。

水墨画のような人生も趣深いし、
カラフルな人生もまた楽しい。
ただ、
縁あって居を構えることになった街を描くとき
それがモノクロの世界だとちょっと寂しいな、と
最近はそんな風に考えることが多くなりました。

知り合いが誰一人いない、
仕事を終え寝に帰ってくるだけだった
モノクロな街が、飲み仲間ができ
遊びに出掛ける友人が増えるたびに
彩り鮮やかに染まっていく。
そして色彩豊かになった街へと帰ってくる
住人たち誰もが明らかに
「イイ顔」になっていくことを
カウンターの中から
ずっと眺めている僕は知っています。



マルサンの丸3周年は、定休日である月曜日。
せっかくの丸3周年が休みだなんて
何というか、「らしいなぁ」という感じです。
きっとお客様もこのバルらしい間の悪さを
理解して下さっているのでしょうね(笑)
前述の結婚を機に地元へ帰られたお客様から
「ちょっとフライングですが
  3周年おめでとうございます」と
色鮮やかなお花と地元のフルーツが昨晩届いて
とても感激しました。
そして深夜、閉店後の店をノックする音が。
恐る恐る扉を開いたところ
そこには「イイ顔」で笑うたくさんのお客様が立っていました。
たくさんのお祝いの言葉と
ボトルがメッセージで埋められたシャンパンを手にされて...

深夜の帰り道。
小さな灯りと暗闇だけという
モノクロなはずの妙典の街が
僕にとっていつも以上に
彩り鮮やかに映りました。
ただ、どういうわけか
街路灯が少し滲んで見づらかったことは
3年間の感謝の気持ちとともに
こっそりお伝えしておきますね。